拒食症 その9 奈落の底
2008年6月の定期検診の日・・・・
学校で紹介され、
唯一診察を受け入れてくれた病院で
2007年9月の初診以来、
2回目の
臨床心理士による
カウンセリングを受けることになっていました。
最初に娘が呼ばれ
1時間くらいは かかるだろうと
ぐったりと ソファにもたれかかっていると
今、入室したばかりの娘が
鬼のような顔で でてきました。
「どうしたの!? 何があったの!?
いま、入ったばかりじゃないの?」
立て続けに質問しても
「何も話すことないから!!!」と
単語帳を広げ 宿題を始めてしまいました。
「おかあさん、 どうぞ」
「はい。 すみません。 何があったのですか?」
「あのくらいのお子さんは 難しいですね」
「はぁ・・・・」
「で、最近の様子は? その後 どうですか?」
ディズニーランドに行ってから 1ヶ月が経っていました。
私は、その変化の様子を話し、
「少し、食べられるようになってきました」
と、伝えました。
すると、臨床心理から
「はぁ!!?? あの身体で!!!???
本当に食べているんですか?
じゃぁ、まだ あんなにやせ細っているのはどうしてですか?」
と、どん底に突き落とされるような質問をされました。
「えっ・・・?」
確かに 制服から唯一見える彼女の足は
細い枯れ枝のようでした。
「どうして・・・?
どうしてって・・・・・
以前の彼女は、
163センチ 50キロで 標準体型でしたが
はっきり言って 大食漢でした。
でも、なぜか太らなかったのです。
だから、私と同じくらいの 一般的な 一人前を食べているだけでは
彼女は痩せて行くはずです。」
「ふんっ!!
おかあさん!! お母さんは何も知らないのね。
彼女は吐いているのよっ!」
「吐いている?」
「そうよ! 吐いているに決まっているじゃない!!」
「決まっている?」
「そうよ。 彼女は吐いているから
今でもあそこまでやせ細っているのよっ!」
「娘が吐いている・・・?
でも・・・
私は、母親ですから・・・
17年も あの子を見てきています。
あの子が吐いていたとしたら、 直感でわかると思います・・・・」
わたしは、
食後、娘がどんな行動をしていたか
必死で思い出そうとしました。
でも、どうしても
吐いているとは 思えませんでした。
「あはははは!!!」と 高笑いをして
臨床心理士は 言いました。
「ふんっ!
ああいった子たちはね、
わからないように 吐くのがとても上手なのよ!!!」
「えっ! そうなんですか・・?」
「そうよ!
私はね、この仕事を 長年やってきているの!!
ああいった子たちを何年も見てきているの!
ああいった子たちが 音を立てずに 吐いているのを
私は たくさん見てきているのよ!!!
この病気はね、 10年も20年も 治らないのよ!!!」
あなたは拒食症のことを何も知らない愚かな母親ね!と言わんばかりの
言葉を聞かされ、
絶望感に打ちひしがれ
目の前が真っ暗になりました。
病院に来ても
治る見込みが期待できるどころか
「治らない!」と宣言される。
希望なんか持つな!
可能性なんか無いのだ!!と
宣告されているような気がしました。
心臓の鼓動が とても早くなっていることに気が付きました。
そして、
頭が 真っ白になっていきました・・・。
決めつけた言葉・・・
「ああいった子たちはね・・・」という見下げたものの言い方・・・
絶望と怒りが体の中をすごいスピードで駆け巡っていました。
カウンセリングとはほど遠い
一方的な体験談を聞かされ
ふらふらと、部屋を出ると
娘は、宿題に熱中していました。
「この子が 吐く・・・?」
小さいときから身体が丈夫で
そもそも、吐いた事なんて一度もないこの子に
吐き方がわかるのだろうか・・・・・?
そんなはずはない!!
でも・・・
頭の中に山のような質問が吹き出し
自分の質問に 自分で答えを見つけられず
パニックになっていく自分を必死で押さえていました。
「ママ、行こうか!」
と、娘が声を掛けてきました。
カウンセリングの後、
医師による 血液検査のデータ解析を聞くことになっていました。